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綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp - ヨガ・瞑想を知るホームページ

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自分を受け入れる

 

暮らしの中のヨガ哲学

すっかり春らしい天気が続いていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

私の方はこの4月に事務所の移転があり、まだデスク横に積み上げたダンボールに囲まれつつ、大量の書籍もとりあえず本棚に詰め込んだ状態で、日々その整理に追われています。


また、この4月からはシンプル・メディテーションをテキストにクラスを展開しているのですが、本当に色々な感想やコメントを頂戴することができて、とても参考になっています。ありがとうございます。

そんな感想の中で、複数の方から「ありのままの自分を認めるのは難しい」という声を頂戴しましたので、他にも多くの方が同じ悩みを抱えていらっしゃるものと察し、今回はこのテーマをピックアップし、掘り下げてみたいと思います。


そもそもこのテキストでは、瞑想の最初に「スタート地点としての自分」を、まず認めてあげることから始めています。いきなりハードルが高いと感じる方も少なくないと思いますが、同時にスタートだから認められるという方も多いようです。

つまり、ヨーガのクラスや瞑想を行った後に何となくすっきりしない感覚があったとすれば、そんな自分に対して拒絶してしまうこともあると思いますが、まだ何もしない状態、これから調整を行う前の段階で完璧である必要は何もありません。むしろ完璧であれば調整の必要がないわけで、だから「調整前=不完全で当然」という気持ちが働いて、ありのままの自分を認めやすくなるわけです。


今はそのままでいい。だって今から目的地に向かって調整するんだから。それは90分のクラスかも知れないし、数ヶ月、または数年の調整になるかも知れないけれど、調整の方法を知っているから、今はスタート地点としてこのままでいい。


と自分に言い聞かせてみるものの、それでもやはり、ありのままの自分を受け入れるのは難しいという声が聞こえてきそうなので、どういう風にヨーガを行えば自分を受け入れられるようになるのか、さらに掘り下げていきましょう。。


今この瞬間を感じるようにヨーガを行うこと。


私たちが自分自身を認められない原因の多くは、過去を振り返ったり、未来を予測したりすることにあります。かつては持っていたもの、例えば友人や家族、能力、仕事、財産、若さ、美貌、肌の艶と潤い、、と偏ってきてすみません。。。そういったものを今は失っているとすれば、それは今の自分を否定する大きな原因になります。

また、この先起こり得るかも知れないこと、例えば家族を失ったり、職を失ったり、取引相手を失ったり、信頼を失ったり、若さ、美貌、肌の艶と潤いをさらに失ったりと、、かぶせてすみません。。。そういったものを失う可能性を予測し、それを引き起こしてしまうような今の自分の性格や能力などに対して否定してしまうかも知れません。


そういった過去や未来のことさえ考えなければ、もっともっと今の自分を認めてあげやすくなるはずです。過去も未来もない世界では、失ったものに固執して嘆くことも、失うことに怯えたりすることもないでしょうから。


だからヨーガでは、例えば前屈をする際に「いつもこうだから」「昔はできていたから」と過去に意識を向けることなく、またバランスを崩して周囲から低く見られる未来に意識を向けることなく、ただその瞬間に身体から受け取る感覚にのみ意識を向けようとします。伸びていく背骨の感覚、体重が右足へとシフトしていく感覚、内側から深まっていく息の感覚。


今この瞬間、実際に感じている感覚にのみ意識を向けていくこと。


その瞬間には、過去への固執も未来への不安もありません。ただ今この瞬間、感じている感覚だけがリアルに存在し、ただその感覚と向き合っている自分がいます。

そして、その瞬間こそ、感じているものを受け入れるチャンス、ありのままの自分を受け入れてあげるチャンスなのです。


アーサナの中で、ただ自分自身の感覚と向かい、そのすべてを優しく受け入れてあげること。聞き手にまわって大らかに聞いてあげること。そこを大切にしながらヨーガを行うことで、どんどん自分を受け入れる、自分に優しくなることが上手になっていくのです。


そして、それが上手になってきてから、受け入れてあげる範囲を少しずつ広げてあげればいいのです。


今この瞬間、腕を上に上げている感覚に意識を向けるように、
今この瞬間、肺に息が吸い込まれている感覚に意識を向けるように、
今この瞬間、未来のことを考えている心に意識を向ける。


今この瞬間に留まると聞くと、何だか過去も未来も考えちゃいけないようにも聞こえますが、そんなことはまったくないのです。今この瞬間感じている感覚をただ意識することが上手になれば、過去や未来を考えている自分の心に対しても同じことができるようになるのです。過去も未来も考えちゃダメなんて言われると、生活できないですからね。。


とは言え、自分の思考をただ意識するというのはとてもハイレベルなことなので、まずは今この瞬間の感覚を受け入れることをひたすら練習することが大切になるわけです。


そういった練習を経て、本当にありのままの自分を100%受け入れられるようになる。


そして本当に深く、それができるようになれば、それを他人に対してもできるようになるでしょうから、瞑想とは、自分を認めてあげることに始まり、自分を認めてあげることに終わると言っても過言ではないのです。


瞑想のスタートでありながらゴールでもあるその感覚。


今100%受け入れることができないことに嘆かず、たとえ数%でもできたならよしとして先へ進み、そして一巡したとき、きっともう数%でも自分自身に優しい気持ちでいる自分がいると思いますよ。


そのためのアーサナ練習、毎日積み重ねていきたいですね。


Shanti


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