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綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp - ヨガ・瞑想を知るホームページ

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月と太陽

 

暮らしの中のヨガ哲学

すっかりと梅雨も明け、これでもかという勢いで太陽が照りつける今日この頃。

のはずなのですが、先日再び訪れた日光では、少しばかり小雨がぱらつく中で、第一回Yoga Nikkoが行われまして、再びこの綿本、癒され、ほぐされ帰って参りました。

毎回ブログ的な色彩がエスカレートしていてスミマセン。


謝りつつも許されるならば、改めて日光の素晴らしさを力説したいところなのですが、長くなるので少しだけ。

今回、2社1寺と呼ばれる、東照宮、二荒山神社、輪王寺を会場にクラスが行われたのですが、そのロケーションが前回以上に素晴らしいものですから、日本庭園や日光杉の並木道をちらりちらりと眺めつつ、そこから素晴らしい大自然の気をいただきながら誘導させていただくことができ、本当に気持ちよく、ひょっとすると受講生の誰よりも気持ちよく癒されてしまいました。

毎度ですが、この場をお借りしまして、受講生の皆様、2社1寺の宮司、門跡の方々、主催者と運営スタッフ、ボランティアの皆様、そして遠くから来てくれたショーンを始め、先生方に改めて御礼申し上げます!


また前置きが長かったですね。すみません。

そして今回のテーマなのですが、同じ日の光でも太陽のお話しを。

お察しの通り、日本で46年ぶりに観測された皆既日食の話題なのですが、世界各地で様々なドラマが繰り広げられたようで、私はテレビでしか見れなかったのですが、思わずその光景を見て涙してしまいました。


地球にとって最も馴染み深い2つの天体がぴたりと重なる瞬間。

昼は一瞬にして夜となり、その月をすっぽり包み込むような太陽の輪郭が、背後で後光のように光り輝く光景。


テレビを見ていて自然に涙が流れたくらいですから、実際にその場に居合わせたとすれば、それはもう気絶する勢いで感動していたのかも知れません。


月と太陽が重なる瞬間。


それを、(地上波デジタル時代にも関わらず)ブラウン管を通して目の当たりにし、この綿本、思わず 「ヨーガだ!」 と口に出しかけました。(出せよという感じですが。。)


月が象徴する陰の世界と、太陽が象徴する陽の世界の完全なる重なり。


私は自分のワークショップやクラスの始まりなどで、よくこんな質問をします。


「私たちにとって、理想的な精神状態ってどんな状態だと思います?」


すると多くの会場で「落ち着き」「静寂」「平安」という言葉が返ってきます。

間違いではないと思うのですが、私はその背後にあって、その状態を支え、その対極にあるともいえる「意欲」「イキイキさ」「情熱」といった要素も必要なのではと問題提起します。


確かに瞑想が究極に深まっっていくと、心が空っぽになり、完全な静寂=陰の状態に没入するような印象があると思います。でも、例えば禅の段階を示した十牛図では、その空っぽの状態というのは禅の第8段階であって、そこを経て日常的な暮らしに戻った状態が最終段階であると説いています。

ヨーガや禅では、何も考えない、ぴくりとも動かない状態を目指している訳ではないのです。


陰と陽のバランス。


そもそも陰陽とは、あらゆる存在の中に織り込まれて、それを存在せしめている根源的な要素のこと。

表だけのコインがないように、いくら絵柄が同じだったとしても、コインには表裏があってひとつのもの。

同じように、すべての存在の中には陰と陽の両方が共存していて、その両方があってはじめて存在がある。どちらか1つでは存在しえないものであり、その両極の要素、エネルギーが作用して、あらゆる存在が成り立ち、変化していると東洋思想では教えます。


そして私は、その陰と陽の完全なるバランスこそが、ヨーガを通して目指す境地であるといつもお話ししています。


実際、私たちが普段行っているヨーガは、多かれ少なかれ、動く以上はハタヨーガの流れを汲んでいるのですが、このハタのハは陽の象徴である太陽を、タは陰の象徴である月を意味し、その完全なる調和を目指しているわけなのです。


穏やかさの中に活力があり、活力の中に静けさがある。


具体的にポーズで言えば、とてもエネルギッシュにお腹の中から湧き起こるパワーを感じ、それが一方では足の裏へと伝わり、もう一方では背骨を伸ばし、そんなエネルギーの波を、静まり返った頭の中で優しく見守っている状態。とてもエネルギッシュでアクティブでありつつも、それを見守る優しい視点が常に存在している状態を目指しているといえます。


とは言え、どうしても多くの人が頑張って、踏ん張って、動的にポーズを行いすぎるものですから、アクティブなパワー的なヨガブームの後に、陰ヨガという対極ともいえるヨーガが、これまた静かにブームになりはじめているのかも知れません。


動的なヨーガと静的なヨーガの両方を実践したり、はたまた動と静の完全なバランスをひとつのヨーガで追求したり。

いずれにしても、陰と陽が見事に同居している状態を、ヨーガでは目指しているといえるのです。


そんな陰陽が渾然一体となった印象が、陰を象徴する月と、陽を象徴する太陽の重なりからドッと私の中に押し寄せてきて、それを見守り切れずに涙してしまった綿本な今日この頃でした。


みなさんは今回の皆既日食、どう見られましたか?


私のように、あまり小難しく見ない方がいいかも知れないですが、日常の中に見え隠れする、ちょっとしたYogaな光景、探してみるのも楽しいかも知れませんね。


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