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綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp - ヨガ・瞑想を知るホームページ

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星が綺麗な夜に

 

暮らしの中のヨガ哲学

地球って本当に素敵な星ですね。

吸い込む息に感じるとても清らかな空気、そして夜空を埋め尽くす無数の星たち。

心の底から癒される瞬間。

これを配信する頃には帰国していると思いますが、私はいま、カリフォルニアにあるYOGA関係の合宿施設に来ていて、朝から夜まで忙しくYOGAを勉強する毎日が続いています。

そんな研修の合間、一歩外へ出ると、上のような素敵な景色に包み込まれます。


どこへ移動しようともコンクリートの地面、所狭しと立ち並ぶビルの谷間に、申し訳程度の星が1つ2つ、そして気のせいか輪郭がくっきりとは言い難いお月様。そんな中で生活していると、地球ってこんな感じなんだっていう印象が日々心の奥に染み渡っていくのですが、まだまだ素敵すぎる星なんですね、地球って。


夜空いっぱいに浮かぶ美しい星。


本当に久しぶりに、そんなたくさんの星を見ていると、これまた久し振りに「今」自分が目にしている光は、どのくらい前にその星を出発したんだろうと思ったりします。

昔はよく、星を見ながら「僕たちは今、過去を見ているだよ」と言っているカップルがいましたが(定かではないですが、たぶんいたと思います。。)、あれってどうなんでしょう。


今、過去を見ている。


確かに、その光は(星にもよりますが)何万年も前にその星を出発し、長い年月を経て私たちの目に届いているはず。

もしも思いきり高性能な天体望遠鏡で、その星を細部までくっきりと見ることができるなら、私たちがその瞬間くっきりと見ているその星の姿は、(星にもよりますが)何万年も前のその星の姿であって、極端な話し、今はもう存在していないかも知れないわけです。

私たちが生まれるずっとずっと昔のそのまた昔、気が遠くなるような遥か昔に、とっくにその星は消えてなくなってしまっているのかも知れません。

でも私たちは、その星がまだ存在している頃の姿を、とてもくっきりと、いや、このくっきりというのは天体望遠鏡があればの話しではありますが、とにかく見ることができるわけです。


私たちは、今、過去を見ている。


どこか神秘的でとても素敵な響きですが、いかんせん理系な私はそんな美しい星空を見上げながらも、いやちょっと待てよ、例えば、自分から50m離れた所に誰か、仮にAさんがいたとして、そのAさんがゆっくりと1分30秒くらいかけて歩いてきて、いま自分のところに到着したとする。

すると私たちは、1分半前、つまり過去に出発したAさんと、今、出会ったことになる。

この場合、私たちは、果たして過去と出会ったことになるのか。


出発したのは過去。でも出会っているのは今。


人と光とでは少しばかり話しが違うものの、ヨーガ的にこの二つを捉えてみると同じ類の出来事。

そこには物事の変化があるだけで、実際には過去も未来もない。何かが常に変化し続けていて、私たちは「今」その瞬間、それを受け取って感じている。ただそれだけ。


キラキラと美しい星空を見上げながら、綿本の雑念は暴走を続けます。


ヨーガでも禅でも、よく心を今この瞬間に留めなさい、未来でも過去でもなく、今この瞬間に! なんてことを言います。


これを上の考え方で捉えると、私たちの心は、本当は未来にも過去にも行くことなんてない。常に心は今この瞬間にあって、ただ過去の記憶を知覚したり、未来のイメージを知覚したりしているだけ。


今この瞬間にある、何かしらの刺激を知覚しているだけ。


それが外から感覚器官を通ってやってきた刺激なのか、はたまた脳みその中で湧き起こってきた刺激なのかが違うだけ。

そんな風に、過去とか未来とかじゃなく、刺激をすべて平等に捉えるとすると、ヨーガや禅でいうところの「本当の問題」は、私たちの心が未来や過去に向かうことにあるのではなくて、その刺激の受け取り方にあることが見えてきます。


受け取った刺激に対して粘着的に固執していくのか、はたまた激しく拒絶してしまうのか、あるいは、それを今この瞬間の揺ぎ無い事実として受け止め、受け入れるか。


ヨーガは最後の感じ方を推奨するのですが、それがなかなか頭で分かっていながらもできない。ついつい前二つのような反応をしてしまうので、便宜上、今この瞬間に心を留めなさいと説くわけです。

今この瞬間にのみ心を留めると、そこには執着や拒絶の入り込むことのできない状態が訪れます。執着や拒絶は、心の中で描く未来や過去を住処とします。今この瞬間には、執着や拒絶が入り込めないわけです。


なので多くのヨーガ講師や禅師は、今この瞬間に留まるよう促すのです。


でも、本当の話、そのままじゃ生きていけないですよね。

例えば私たちが横断歩道を歩いていたとして、信号無視をして突進してくる車を避けるという場面。この場合、私たちの脳の中では間違いなく過去の記憶が引き出され、未来に起こりうることを避けようとしています。


車が突進してきても、今この瞬間にのみ心を留め、深く鼻から息を吸い込んであるがままにドカン。。


なんてこと、少なくとも私は目指すべきゴールにはしたくないです。

今この瞬間に留まることや、心を空っぽにすることで手にした「すべてを受け入れる心」でもって、過去を感じ、未来を感じ、それらの刺激をありのまま感じ、自然な反応を受け入れ、そして車にはねられずに生きていく。


今この瞬間受け取ったものが、外からやって来たものであろうが 内から湧き起こったものであろうが、過去のものであろうが 未来のものであろうが、まずそれを受け止め、受け入れ、その上でよかれと思う判断を尽くしていく。


それが私が目指すYOGAなのかな。。


と、かなりややこしい展開になりつつも、何となく勝手に腑に落ちた綿本は、相変わらずキラキラと無邪気に輝き続ける美しい星空を見ながら、何度か満足気に頷きながら、「私にはビルの谷間が似合っているのかなあ」と苦笑いするのでした。


でも雑念が好きだから、まぁいいか。


ということで、皆さまも素敵な星空と出会えますように。


OM Shanti


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