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綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp - ヨガ・瞑想を知るホームページ

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即興

 

暮らしの中のヨガ哲学

ヨガフェスタ初日。

明日のクラスの輪郭も描けたことだし、今日はゆったりと自分の調整に時間をかけてからたっぷりと寝るか。

なんてことを思いながら、半時間ばかり気持ちよーく瞑想的にアーサナをとっていましたら、内側からぴかぁーっと雷のごとく神のお告げが!


おい、コラム書けよ。


うっ。

神様は今日も綿本を寝かしてくださらないのか。。。

それとも思い出さなかったことにして、このまま眠ってしまおうか。

いや待て綿本。

万が一25日だからということで、こんな綿本のコラムを心待ちにされている奇特な方々がいらっしゃるならば、何とか25日に間に合わせたい。

明日の夜はマシュー先生とお別れの食事会もあるし、フェスタが終われば即イタリア。


などと自問自答をしつつも、半時間と5分ばかり前に落としたばかりのパソコンを立ち上げ、「即興」とタイトルをカチカチと入力し始める綿本でした。


ヨガフェスタ初日。

例年、私はオープニングセッションに一講師として参加させていただくのですが、今年のメンバーは不思議な顔ぶれでして、恒例のケン先生と私のほか、ご存知、二胡奏者であり女優でもあるチェンミンさんに加え、世界的なタブラ奏者であるタイ・バーホーさん。


何の打ち合わせもなく、ただそれぞれが何をやりたいかを漠然と持ち寄ったのが、セッション開始の45分ほど前。

そこから私は、自分の希望を告げ、クラスの後半に簡単なヴィンヤサを担当させてもらうことになりました。


少し気功的な動きからハーフ・ナマスカーラ(太陽礼拝の立位部分だけを繰り返すシークエンス)を行い、その動きから伝わってくるものをタイさんにタブラで表現してもらい、同時にタブラで皆さんの動きをリードしていただく。

さらに、その動きを繰り返す中で、受講生の皆さんには自分の内面を感じてもらい、何かしら別の動きをしたいという衝動が生まれたら、それに従ってもらうようにして、さらにさらに、動きが徐々に発散してきたあたりでチェンミンさんに合流してもらい、その動きを二胡で表現してもらい、そしてリードしてもらうようにお願いしました。


即興の打ち合わせの中から生まれた、究極の即興セッション。


その場にいるみんなが、その”場”から受け取るもの、そして内側から沸き起こるものに身を任せ、タブラを叩き、二胡を弾き、アーサナをとる。


そんな青図を描き、ケン先生のダンスから幕を開けたオープニングセッションは、予定より少しずつ押しながらチェンミンさんのライブへと移行し、いよいよ私とタイさんの出番に。


気功的なナマスカーラは、私が予測していた以上に皆さん集中して動かれ、いよいよタブラとのシンクロが始まります。

スローなテンポから瞑想的なムードを作るタブラの音色に、少しずつ皆さんの動きが自発的になり、おのおのの動きが深まっていきます。

私も気持ちよくなって好き勝手に動き、そんなあたりでチェンミンさんが合流。


会場を不思議な空気が包み込み、皆がそれぞれ自由に動いていきます。

その中でも一番気持ちよかったのは、ひょっとして舞台の前で好き放題動いている私だったのかもという痛い反省はありましたが、逆に入り込んでしまったからこそ感じれたもの、醸し出せたものもあったかなと、相変わらず前向きにコラムは書き進められていきます。


それぞれが、インスピレーションの沸き起こるがままに動いている。

そしてそれは、確かにバラバラに為されることなんだけど、互いに互いを感じ合って起こるもの。言葉を変えると、互いの何かしらが繋がっていて、その上で個々の動きが起こっている。


とある武道家は、「真剣勝負の際に必要なのは、斬られる覚悟である」といいます。


そこに恐れや不安なんかがあると、判断が一瞬遅くなってしまう、らしいのです。

斬られる覚悟をもって敵と接すれば、身体に染み付いたものが自然に”反応”を起こし、避けるという行為が”起きる”のだそう。


まさに瞑想ですね。


もしもそこに鍛錬という仕込みがなければ、斬られる覚悟は、ぷすりと斬られる以上の結末は望めませんが、日々の鍛錬を積み重ねておきさえすれば、あとは心を空っぽにして、それに身を委ねてみるだけ。


無為自然。


そこには確かに動作は存在するものの、「こうしよう!」と思って為された行為は存在しない。


と格好のいいことを言ってのけるも、初心者の方々にはさぞかし退屈なひと時だったであろうと心から懺悔しつつ、このコラムを以ってお詫びと代えさせていただきたいと思います。


退屈だった方々、本当にすみませんでした!


セッションは、やがて穏やかなリズム、メロディーと共に収束へと向かい、しばしの静寂を経て幕を閉じました。

本当に素敵な空気を作っていただいた、あの場にいたすべての方々とスタッフに御礼を申し上げつつ、今度こそ本当に、たっぷりとアーサナをして寝ることにします。


皆さま、おやすみなさい。


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