様々なヨガスタイル
ヨガは講師の数だけスタイルがあると言われているように、インドをはじめ、ヨガ先進国のアメリカ、そして日本でも様々なヨガを学ぶことができます。
ここでは、その中でも代表的なヨガスタイルにフォーカスして、その特徴などをご紹介していきたいと思います。
ラージャヨガ
パタンジャリ(紀元前2世紀ごろ)によって編纂されたとされる「ヨガスートラ」で紹介されているヨガ。数あるヨガスタイルの中で、その筆頭に挙げるべきがラージャヨガ、つまり瞑想ヨガです。
ラージャとは「王」を意味するサンスクリット語(インドの古語)で、ヨガの王道、ヨガのルーツと考えられているものが、坐法を組んで瞑想だけを行うラージャヨガです。
ただ、禅と同様、シンプルなだけに実践が難しく、現在学ぶことができるラージャヨガのほとんどが、ハタヨガのポーズを使って身体調整を行うアレンジ版となっています。
ハタヨガ
様々なポーズを使って身体を動かし、最終的に心の調整をはかるヨガの総称。
ハは太陽を、タは月を意味し、「ハタ」は、その陰陽が織りなすパワー、そしてそれによって形作られている身体を使うという意味があります。
本来のハタヨガは、ゴーラクシャ・ナータ(12世紀)によって考案され、アーサナ以外にもプラーナーヤーマやムドラといったテクニックを使って、体内を巡る気のコントロールを重視していますが、現在学ぶことができるハタヨガのほとんどは、そこをあまり重視せず、様々なポーズを行なう=ハタヨガといった理解となっています。
シヴァナンダヨガ
西洋医のスワミ・シヴァナンダ師(1887-1963)によって考案された、現代ヨガのひとつ。
アーサナ(ポーズ)やプラーナーヤーマ(呼吸法)の実践に加え、マントラの唱和、ヴェーダーンタ哲学の理解を通して、総合的なヨガの実践を目指すスタイルのヨガです。
また、練習の最後に限らず、ポーズ毎にリラックス姿勢であるシャバアーサナを入れ、ポーズの効果や身体感覚を深めることを大切にしています。
アシュタンガヨガ
現代ヨガの師と呼ばれるクリシュナマチャリヤ師(1888-1989)に考案され、シュリ・K・パタビジョイス師(1915-2009)によって確立された、運動量が最も多いヨガスタイルの代表格。
ヴィンヤサ(呼吸と動作の連動)を中心に、決められたアーサナを、決められた順番、呼吸、目線で練習していきます。
ヨガスートラで紹介されている八支則(アシュタンガ)に基づく瞑想ヨガと区別する意味で、アシュタンガ・ヴィンヤサヨガと呼ばれることもあります。
アイアンガーヨガ
B.K.S.アイアンガー師(1918-2014)によって考案された、正確なアライメント(身体の正確な配置)を大切にするハタヨガの一種。
ブロックやベルトなどのプロップス(ヨガの道具)を使いながら、身体の正しい使い方を学び、アライメントを丁寧に調整しながら、アーサナの長いホールドを通して瞑想的なメンタルを養っていきます。
アイアンガー師の師匠も、パタビジョイス師の師匠と同じ、現代ヨガの師であるクリシュナマチャリヤ師。
パワーヨガ
アシュタンガヨガをベースに、アメリカで自然派生したフリースタイルヨガ。
ヴィンヤサ(呼吸と動作の連動)を中心にしながらも、アシュタンガヨガのような決まったシークエンスやルールがなく、指導者が自由にアレンジできることから全米で人気が高まり、世界を巻き込んだヨガブームの火付け役となりました。
運動負荷が高く、ボディメイク効果やメンタル調整効果に優れているため、根強い人気を誇るヨガスタイルです。
ヴィンヤサヨガ
アシュタンガヨガをベースに、アメリカで自然派生したフリースタイルヨガ。
ヴィンヤサ(呼吸と動作の連動)中心のクラス展開という点以外、パワーヨガ同様に厳密な定義がなく、非常に穏やかで瞑想的なクラスから、パワーヨガと同じくらいハードに行われることもあります。
また、ハタヨガというクラス名でも、ヴィンヤサを中心にポーズが行われることもあるので、近年ではこのあたりの区別をすることが非常に難しいというのが実情です。
陰ヨガ
ポール・グリリーによって確立された、一つひとつのアーサナで長時間ホールドするスタイルのヨガ。
通常のアーサナでは主に筋肉にしか作用しないのに対し、陰ヨガでは一つのアーサナで3~5分ホールドすることで、身体の深部にある結合組織に働きかけ、深い部分からリラックスを促します。
また、身体の奥深い部分をじっくりと内観するため、瞑想的な精神状態を育むことにも長けています。
リストラティブヨガ
ボルスター(長枕)や毛布などを使い、長時間リラックスポーズだけを行って心身を癒すヨガ。
元々はアイアンガーヨガの中で行なわれていたリラックス系ポーズを、アメリカの理学療法士であるジュディス・ラサターが体系化したもので、陰ヨガよりもはるかに負荷の低い姿勢で、1ポーズ15~20分程度ホールドすることで穏やかに身体深部に働きかけ、心身を深くリラックスさせていく穏やかなヨガです。
陰ヨガ同様、身体深部の感覚を内観することができ、また陰ヨガ以上に受動的な脳の状態を育むことに長けています。
クンダリーニヨガ
ヨギ・バジャン師(1929~2004)によって考案された、尾骨付近の気を頭頂まで上昇させることで、完全な心の調整をはかるヨガ。
アーサナ以外にも、火の呼吸と呼ばれる素早い呼吸と共に、特殊な動作を長時間反復したりする中でエネルギーの解放を行い、身体的にも負荷が高いことから、アスリートなどにも人気があるヨガです。
ホットヨガ
ビクラム・チョードリー(1946-)によって考案された、高温多湿の室内で行うヨガ。
本来は、決められた26のポーズを行うビクラムヨガとして全米を中心に広まりましたが、高温多湿の室内で行うという点だけが独り歩きし、ホットヨガとして紹介されることが増えてきました。
大量発汗による爽快感やデトックス効果が注目され、特に日本では美容目的で行われることが多いヨガです。
文責:綿本 彰