本文の開始

綿本ヨーガスタジオ提供 YOGA.jp - ヨガ・瞑想を知るホームページ

綿本彰によるヨガ解説・瞑想解説。メディテーション、マインドフルネス、ヨガ哲学、インド哲学、理論解説、用語解説、無料情報提供ページです。

ヨーガスートラって何?

 

暮らしの中のヨガ哲学

あなたは何Yogaを実践していますか?

少し前までは、何Yogaとか何スタイルとかではなく、普通に”Yoga”
で通用していたのですが、今では何Yogaのクラスかを明快にしないと混乱が生じるほど、”スタイル”という考え方が定着してきたようです。綿本ヨーガスタジオに関して言いますと”パワー”と”ラージャ”の二本柱があるのですが、ラージャの方を受講された方に、なぜ”ハタ”ではなく”ラージャ”なのですか、という質問を受けることがあります。このクラス、ラージャヨーガ(瞑想ヨーガ)なのに、実際は身体を結構動かしますし、これらのアーサナ(ポーズ)はほとんどがハタヨーガのものなのです。では何故ラージャなのか。その理由は、クラスの土台(哲学)を「ヨーガスートラ」に持ち、一つひとつのアーサナを”瞑想を行うための姿勢”として捉えているからに他なりません。そこで今回、それをご理解いただく上で、また純粋にスートラにぜひ興味を持っていただく意味でも、テーマを「ヨーガスートラ」に掲げ、紙面の関係で簡単にではありますがご紹介していきたいと思います。長い前置きすみません。


『ヨーガスートラ』
ヨーガを深めていくプロセスの中で誰もが直面し、そして多くの指導者が最高のバイブルとする古典文献。この文献は、紀元前2世紀頃(紀元後5世紀頃という説もある)に、それまで散在していたヨーガに関する知恵や技法を、ヨーガ研究家のパタンジャリが編纂し、一冊の教科書としてまとめたもので、現存する最古のヨーガ専門書と考えられています。

その内容はと言えば、数千年たった今もバイブルと称されるだけあって超大作、と思いきや、実はたった196の短いコメントが記された詩のような読み物。その簡潔さゆえに1文1文がとても濃厚で、例えばアーサナ(坐法)については「坐法とは、快適で安定したものである」と記し、その短いコメントにあらゆるアーサナについての哲学が凝縮されていたりします。そもそも”スートラ”とは、紙のない時代に、葉っぱに教えを簡潔に記し、その束に糸を通して冊子にするための”糸”のこと。厳密には”縦糸”のことで、日本では「経」と訳されています。地球儀でも経線は縦の線であるように「経」は縦に貫く糸のこと。仏教のお経もこれが語源となっています。現代のように印刷技術の発達していない時代だからこそ、コメントがとてもシンプルで簡潔なものになっているのでしょう。

この頃、ヨーガスートラ以外にも、後にハタヨーガの母体となるヴェーダーンタ哲学の教科書「ブラフマ・スートラ」や、インド哲学の他の学派の教科書「ミーマーンサー・スートラ」「ヴァイシェーシカ・スートラ」「ニヤーヤ・スートラ」など、様々なスートラが編纂されています。ちなみに、この縦糸に対して横糸という考え方があり、これをタントラというのですが、これについては話が長くなるので、次月にでもご紹介させていただきたいと思います。


話をヨーガスートラに戻しましょう。
このスートラですが、196のコメントを4つの章で区切っていて、次のような章立てになっています。


   第一章 サマーディ・パダ (三昧の章)
   第二章 サーダナ・パダ (実践の章)
   第三章 ヴィブーティ・パダ (成就の章)
   第四章 カイヴァリヤ・パダ (絶対の章)


第一章は、瞑想が深まるとどうなるのか。ヨーガが目指す境地について、その深さをいくつかの段階に分け、それぞれどういった状態なのかを紹介しています。また、どうすればその境地にたどり着けるのか、簡単な方針も指し示しています。


第二章は、その究極の集中状態を導くために行うべき八支則(アシュタンガ)について紹介されています。その具体的な内容は、こちらをお読みいただくとして、日常生活での物事の考え方や行動、そして瞑想のための姿勢や呼吸調整の本質が記されています。


第三章は、その集中を深めていくにあたり体得できる(らしい)、様々な超能力について記されています。自分の身体を他人から見えなくしたり、読心したり、遠隔の出来事を知覚したりなど、現代人の私たちにとっては異質とも言える章です。もちろん私は超能力者ではありませんが、ヨーガの副産物としてのダイエットや自己啓発など、様々な恩恵を前面に出してヨーガに興味を持ってもらおうとする気持ちを持っている人間として、時代背景を考えると、それと同じような動機付けのひとつとして、超能力を前面に出したのではないかと勝手な推測をしています。


そして第四章は、第一章で紹介した究極の境地へ至るために、より細かい哲学的な説明や方法論について紹介されています。


このように、少し呪術的な色彩も含んでいるヨーガスートラなのですが、現代の言葉と感覚で読み解いていくと、まさに現代人にとっては欠かせない知識、スタジオでのアーサナを深めていくエッセンスが凝縮されていることが見えてくるのです。

そして何よりも、日常生活の中にヨーガの知恵を生かすための本質が織り込まれている。だからこそ、私はこのヨーガスートラを自らのバイブルとし、これをベースにクラスを展開したいと思っています。

ハタではなくラージャと名乗る理由。少し長くなりましたが、次回はこの続きでタントラについてご紹介していきたいと思います。
(ちなみに、スートラを勉強される方は、入門書として「インテグラルヨーガ」がおすすめですよ。)


ページの終了